校正者が語る!コンテンツ制作で必須の校正・校閲ーそのやり方とは

コンテンツ制作で必須となるのが掲載する文章の「校正・校閲」です。文章を高い品質にすることは、印刷物やインターネットコンテンツなど、あらゆるコンテンツにおける重要な課題です。文章に誤字や脱字が多ければ記事の信頼性を下げますし、誤字脱字が記事の意味や意図をゆがめる場合もあります。誤った内容を掲載すればそのサイトやビジネス全体の信頼を失う結果にもなりかねません。これらの文章をチェックし推敲する作業を一般的に「校正」「校閲」と呼んでいます。では「校正」と「校閲」にはどのような違いがあるのでしょうか。ここではこの2つの作業の意図や具体的なやり方、その意義について解説します。

校正と校閲の違い

「校閲」は石原さとみさん主演のテレビドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」で一躍注目を浴びました。主にライターや作家自身が自分の文章を読み直してよりよい表現にしたり不適切な点を修正したりすることを「推敲」と呼びますが、「校正」「校閲」はどちらも書き手以外の第三者が客観的な視点で文章を読み、間違いを直す作業を指します。
「校正」は文章や文字を比較して修正点を見つけて直すことで、「校閲」は、文章の意味や内容に踏み込んで深く読み、事実関係が合っているか、情報が正しいかなどを確認する作業です。ここでは「校正」「校閲」の内容について、それぞれ詳しく説明します。

校正で行うべきこと

「校正」は文字や文章を元原稿と突き合わせて誤りを正す作業で「比べる」ことに重点を置いています。具体的には「突き合わせ」「赤字照合」「素読み」などを行います。

「突き合わせ」は、元の原稿と活字のゲラ刷りの文字に食い違いがないか、1文字ずつ確認する作業です。ここでは初校(最初の校正刷り)と元原稿など、現段階のものを1つ前の工程と比べます。手書きの原稿に合わせて活字を一字一字選びとり印刷用の版を組むのが主流だった時代には、まずこの作業で活字の誤植を探すのが重要な工程でした。

「赤字照合」は原稿段階の修正内容と初校、最終修正内容と最終ゲラ刷りなどを比べて、修正が新しい工程に適切に反映されているかどうかを確認します。「突き合わせ」は1文字ごとに確認しますが、「赤字照合」では修正ポイントごとに確認します。これら「突き合わせ」「赤字照合」の作業では、校正者がペアを組み、一方が原稿を読み上げ、もう一方が原稿をチェックするやり方の「読み合わせ」も頻繁に行われます。
これらの作業では、思い込みによる見落としを防ぐために、あえて「内容を読まない」ことも重要です。このため、媒体によっては文章を逆方向から1字ずつチェックする作業を行うこともあります。

「素読み」は元の原稿を離れ、校正刷りだけを読んで誤字脱字や不自然な文法などを直す作業です。この場合の比べる対象は各種の辞書や記者ハンドブックです。ウェブコンテンツの場合、校正というとほとんどがこの作業となります。誤字脱字や文法などを照合するために使うのは辞書ではなく、メディアなどが作成する記事作成に関するレギュレーションの場合があります。そこに示された表記ルールに合わせて表記を行います。ウェブコンテンツは作成された原稿と公開される原稿がデータ的に同じであるケースがほとんどなので、元原稿と印刷原稿、といった概念が基本的にはないのです。

印刷業界でも、21世紀の現在では、デジタル入稿した文字原稿データをそのままDTPシステムやWEBパブリッシングシステムに流し込むのが主流となり、植字や写植を行うことは少なくなりました。その一方で、印刷物などをスキャナで取り込み文字認識させるOCR(光学的文字認識)作業が普及し、コンピュータが生成したテキストデータと印刷物を照合するための「突き合わせ」など、新たな需要も生まれています。

校閲で行うべきこと

「校閲」は素読みによる誤字脱字のチェックを行った上で、文章の意味や内容に踏み込んで事実関係の正しさや情報の適切さを確認する作業です。地名、人名や商品名や企業名など固有名詞、データなどの数値、歴史的事実との照合、記述されている内容が正確かどうかなどあらゆる範囲にわたります。 文章を読み疑問や違和感があれば、その部分の信憑性を確認します。辞書や書籍、インターネットなどあらゆる資料を参照して照らし合わせます。そして徹底的に読み込んで事実確認を行った結果を編集者やライターにフィードバックし、再確認や書き直しを提案します。媒体によっては校閲担当者が加筆を行うこともあります。

ワープロソフトの校正支援機能などコンピュータの修正ツールも、単純な誤字脱字の発見と修正なら一定の結果が出せる程度に進歩しています。しかし、コンピュータが文章の意味を本質的に理解することはありませんから、内容の吟味はすべて人間の技量が物を言う作業です。

これらの作業を完了して、なお文章に間違いが残った場合、校閲担当者は立場上大きな責任を負うことになります。すべて人間の作業でである以上、誤りを完全になくすことは不可能ですが、それでも万全を期すことが職務上望まれます。「校閲」とはミスがなくて当たり前、作業の跡が「残らない」ことが求められる厳しい職務です。

校正、校閲のコツ

文章表現は答えが一つではなく、必ずしも正解が存在するわけではないところが校正、校閲の難しさの一つです書籍、新聞、インターネットなど各媒体が想定する読者層を意識しながら、文章の言葉や表現がターゲットに届くものになっているかを適宜判断することが大切です。

インターネットでは印刷媒体に比べ、くだけた文章、口語に近い文章が多く、Googleなど音声入力を利用する書き手も増えたため、書き文字と口語との接近は進んでいます。そのくだけた表現が、書き手の“味のあるスタイル”なのか、それとも不適切な表現なのか、常識や社会通念にも照らし合わせ確認します。
不適切な部分を修正した上で、可能な限りライターの“持ち味”を生かすのも腕の見せ所です。 IT関係、企業担当者向けの話題など専門的な内容のコンテンツでは、そこで使われるジャーゴン(専門用語)やスラングを生かすのか置き換えるのかも難しい判断です。置き換えや用語の説明が過剰になれば、肝心のターゲット層に知識や情報が不十分なコンテンツと判断され読まれないこともあります。もとの表現を生かすか、それとも修正すべきか、判断に困ることもたくさんありますが、担当編集者やライターの意向もくみ取りつつ、時には関係者と議論を重ね、何らかの結論を導くことになります。また、赤字や誤りを見抜くためには「作家や書き手から一定の距離を置き客観的な立場を守る」ことも大切です。この「客観性」は「校閲ガール」の原作、ドラマ版でも繰り返し取り上げられているテーマで、「校閲ガール」原作には小説の校正校閲でその作家のファンを作業者から外すシーンがあります。とはいえ、内容に踏み込んで読まなければ信憑性などを精査することはできません。この難しいバランスを取りながら文章にあたるのが校閲者の責務になります。

既存の情報をもとに画像から文字を認識したり、特定のルールに合う要素を選び出したり、ビッグデータと照合して最頻値に近いものを見つけて提示することはSiriやAlexaなどのAIアシスタントも実現していますが、文章、画像などを合わせて判断して「意味を理解する」「前例がないことに臨機応変に対応する」ことは人間にしかできません。「校閲」は今なお、熟練したプロの手が必要な作業なのです。
インターネットの世界が広がり、大量の文章が世の中に出回るようになりましたが、それだけにコンテンツや文章の品質のばらつきも目立つようになっています。文章、画像などを合わせて総合的にコンテンツを判断して品質を上げるためには、熟練したプロの担当者に任せるのが確実です。文字と文章を徹底して確認し続ける「校正」「校閲」は「送り手の意図を正しい形で届ける」という使命を帯びた、コンテンツ制作になくてはならない重要な業務なのです。

ライター:かくたま校正者 zcb
新聞記者としてキャリアをスタート。野球、芸能、スポーツなどを中心に取材、記事執筆を手掛ける。その後、新聞、ウェブ媒体を中心に校正・校閲の仕事に携わる。記事作成にかかわる作業全般に関して30年近い経験を持つベテラン校正者。最もキャリアが長く得意なのは校正・校閲。現在もかくたまの校正者として日々校正を続けている。