ターゲットセグメンテーションとは、マーケティングの基本として知られる「STP分析」の一部です。その詳しい定義と重要性を確認しましょう。その詳しい手順と、活用できる「クラスター分析」や「6R」などのフレームワークについても解説しています。
ターゲットセグメンテーションとは
ターゲットセグメンテーションとは、ビジネスの対象とする人々を性別や年齢層、生活エリアなどの情報を基準にして区分し、どの区分をターゲットとしてマーケティング施策を実施するかを決定することです。その定義を詳しく確認しておきましょう。

STP分析の「S」と「T」を実行すること
ターゲットセグメンテーションとは、STP分析のうち「セグメンテーション=S」と「ターゲティング=T」を実行することです。
セグメンテーションとは、市場をいくつかの区分(セグメント)に細分化すること。性別や年齢、年収、地域、関心など、自社の商品やサービスとの関連が高い指標を基準として細分化します。
ターゲティングとは、自社の商品やサービスにマッチしているセグメントを決定し、そこに人材・資金・情報などのリソースを集中させることです。対象として決めたセグメントを「ターゲットセグメント」と呼びます。
つまりターゲットセグメントを決める作業が「ターゲットセグメンテーション」です。
STP分析の「P」とは
STP分析のもう一つの要素は「ポジショニング=P」です。
ポジショニングとは、決定したターゲットセグメントに参入している競合他社と比較して、自社がどのような立ち位置(ポジション)を取るかを決めることです。
「ポジショニングマップ」のフレームワークを活用して、顧客から魅力的で価値がある商品やサービスと認識されるために、どう差別化し、競争優位の立場を築くかを考えます。
ターゲットセグメンテーションとは別の作業ですが、STP分析をするためにはポジショニングも併せて実施しましょう。
ターゲットセグメンテーションの重要性
ターゲットセグメンテーションは、具体的なマーケティング施策を決めていく上で、その土台となる重要な要素です。
ターゲットセグメンテーションを実施することで、自社の商品やサービスの対象となる「ペルソナ」が明確になります。どの年代の、どのようなニーズのある人をターゲットにするのかという「ペルソナ」を明確にしてから施策を決めることが、マーケティングの成功のために必要です。そのためにターゲットセグメンテーションが役立ちます。
セグメンテーションの方法
ターゲットセグメンテーションの前提となる「セグメンテーション」の具体的な方法・手順を解説します。
地理や行動などの「変数」を利用して細分化
まずはどのような基準で市場を細分化するかを考えます。セグメンテーションで用いられる基準は主に以下の4種類です。
- 地理的変数(ジオグラフィック変数)
- 人口動態変数(デモグラフィック変数)
- 心理的変数(サイコグラフィック変数)
- 行動変数(ビヘイビアル変数)
「地理的変数」とは国や地域などのエリアによる条件です。その地域の気候や、都市の人口規模、内陸部・沿岸部など、エリアの条件がマーケティングに影響する場合に利用されることがあります。
「人口動態変数」とは年齢や性別、職業など、人の属性に関する条件です。一人ひとりの属性だけでなく、家族構成や世帯所得など、一世帯ごとの属性で考える場合もあります。
「心理的変数」とは趣味やライフスタイル、価値観などに関する条件。パーソナリティー、社会的階層、価値観、購買動機など感性に強く関わる分類です。
「行動変数」は、自社商品やサービスに対する行動による分類です。ヘビーユーザーかライトユーザーか、Webサイトを閲覧しただけなのか資料請求までしたのかなど、購入した人だけでなく購入に至っていない人の行動でも分類できます。
これらの変数を利用するには、どのユーザーが条件に当てはまるのかを「測定」することが必要ですが、インターネット技術の進歩やスマートフォンの普及などによって、それが容易になっています。
顧客視点の「クラスター分析」で細分化
ビッグデータやアンケート調査の分析などで用いられる「クラスター分析」は、セグメンテーションでも利用されます。
クラスター分析とは、まとまりのない集団の中から類似性のあるものを集めて、いくつかの集団(クラスター)を作ることです。
年齢や性別などの変数で分類する方法とは異なり、「似ているかどうか」を基準にして集団を作ります。各対象をトーナメント方式で集団化していく「階層クラスター分析」や、分布図の中で近いもの同士を集団にする「非階層クラスター分析」など、いくつかの手法があります。
ターゲティングの方法―対象を決める基準とは
セグメンテーションができたら、次はターゲティングです。対象とするセグメントの決め方を解説します。
セグメントをターゲティングする際に役立つ「6R」
ターゲティングするセグメント(市場)を決める際は、「6R」と呼ばれる基準を参考にするのが基本です。6Rとは、以下の6つの評価基準の頭文字からきています。
- 有効な市場規模(Realistic Scale)
- 成長性(Rate of Growth)
- 顧客の優先順位/波及効果(Rank/Ripple Effect)
- 到達可能性(Reach)
- 競合状況(Rival)
- 反応の測定可能性(Response)
「有効な市場規模」とは、十分な利益が得られるほどの市場規模があるかどうかです。市場規模が小さいことはデメリットとは限りませんが、あまりにも小さすぎると、ビジネスモデルとして成立しない可能性があります。
「成長性」とは、その市場が成長段階にあるのか、それとも衰退期にあるのかという点です。一般的には成長段階で参入した方が有利とされています。
「顧客の優先順位/波及効果」とは、優先的に狙うべき市場かどうかという点です。イノベーターやアーリーアダプターの口コミ効果や波及効果が高い市場を優先的に狙います。
「到達可能性」は、自社の商品やサービスがユーザーへ届くのか、宣伝が届くのかという基準です。地理的に遠すぎたり、予算不足など、物理的に到達不可能という状況もあり得ます。
「競合状況」とは競合他社の参入状況です。ブルーオーシャンであれば理想的ですが、シェアを獲得する戦略が見つからない場合には、新規参入は難しいかもしれません。

「反応の測定可能性」とは、そのセグメントをターゲットに決めた場合に、実施するマーケティング施策の効果測定ができるかどうかです。広告宣伝効果や顧客満足度の効果測定を通じて、施策の改善やPDCAを早く回していくことができます。
以上の6つの基準を参考にすることで、魅力の高いセグメントかどうかが判断でき、ターゲットを決めやすくなります。
「差別化マーケティング」と「集中化マーケティング」
ターゲットにするセグメントは1つとは限りません。
複数のセグメントをターゲットとして、それぞれのセグメントに対して別々の商品やサービスを展開する手法を「差別化マーケティング」と呼びます。大企業のように豊富なリソースを利用できる場合に採用されることが多い手法です。
一方、1つのセグメントに絞って、自社の全てのリソースを投入することを「集中化マーケティング」と呼び、中小企業で採用されることが多くあります。
コストやリソースの状況を十分に計画して、ターゲットにするセグメントの数を決めることが重要です。
ポジショニングの方法―競争優位を築く戦略を決めるには
前述のとおり、ポジショニングでは、ターゲットとして決定したセグメントの中で、どのように競争優位を築くのか、自社の立ち位置を考えて具体的な戦略を決めます。
優位性を築く方法の一つは「差別化戦略」。他社の商品やサービスにはない魅力を提供することで優位性を築く手法です。
他社よりも低価格にすることで差別化する「コスト・リーダーシップ戦略」によって優位性を築く方法もあります。
まとめ
ターゲットセグメンテーションとは、自社ビジネスの対象とする市場セグメントを決めることです。自社ビジネスの対象とする市場セグメントを決めたら、自社のビジネスを独自のポジションに位置づけ、マーケティング施策の方向性を明確にしましょう。STP分析の方法を知ることは、マーケティングを成功させるために必要不可欠です。