「てにをは」をはじめとした助詞は文章の流れを整えたり、わかりやすくする、ニュアンスを変える、多くの役割を持っています。しかしてにをはの使い方を間違えると、文章のニュアンスが変わってしまい、読み手に誤解を生む恐れがあります。
この記事では、そんな「てにをは」の種類やニュアンスごとの使い分けについて例文を用いて説明します。
「てにをは」とは?
「てにをは」とは、主に助詞全般を表す言葉です。助詞は「が」「は」「も」「を」「と」「で」「に」など、語句の間を繋いで、語句同士の関連を持たせたり、意味を加えたりする働きがあります。
「てにをは」という呼び名の由来は、漢文です。漢文を訓読みする際に使われた漢字の周り四隅にカナを振った「ヲコト点」という図があります。
それを、右周りに訓読みした音が「て」「に」「を」「は」でした。したがって、てにをはの名前は、この訓点から名付けられたと言われています。
では、実際にてにをはにはどんな役割があるのかを解説します。
例えば、次の文の( )に入る助詞を考えてみましょう。
・A( )B( )笑う。
これに助詞を入れると、次のような意味合いになります。
AとBは笑う
→A、Bが一緒に笑っている様子
AがBを笑う
→AがBを笑う対象にしている
AをBが笑う
→BがAを笑う対象にしている
このように、助詞の使い方次第で、AとBの関係やそれぞれの動きを変えることができます。
また、助詞を効果的に使えば文章に強弱を付けたり、読み手に積極的な印象を与えたりすることもできます。読み手に伝えたい内容に合わせて使い分けることが大切です。
ただし助詞は正しい使い方ができていないと、文章が不自然になったり、意味が誤って伝わってしまいます。実際に助詞の使い方を間違えた例文を見てみましょう。
・空腹なのに、食べる。
・彼女を先生の尊敬している。
この文章だと、つじつまが合わない上に意味が通じないですよね。
このように助詞の使い方が違っている、前後のつじつまが合っていないことを「てにをはが合っていない」と表現します。
助詞はたった数文字ですが、間違えると文章全体の意味が変わってしまうほどの影響力を持っています。なので、「てにをは」は読み手に伝えたい内容に合わせて使い分けましょう。
「てにをは」の使い分け方
「てにをは」の意味や働きについて少し理解が深まりましたね。しかし実際に文章を書くにあたって、どのような「てにをは」があるのか、どうやって使い分けたら良いのか迷うこともあるでしょう。
下記で具体例を出しながら説明します。
積極性を出す!「で」と「を」の使い分け
例えばこの2つの文があったとします。この2つの文章を「担当は誰を希望しますか?」のような質問に答えたものと仮定して、読んでみてください。
・担当はAさんをお願いします。
・担当はAさんでお願いします。
「を」は直後の動詞を強調する働きがあります。そのため、「を」を使った場合、お願いをする側にAさんを希望する意思がはっきりある印象を与えます。
一方、「で」を使った場合、消去法で 他にいないなら と言ったニュアンスを感じさせますよね。これは「で」は車で〜や100円で〜など、手段や方法に使用することが多く、主張を強める助詞ではないためです。この場合は「仕方がないから」Aさんを選んだ、という投げやりな印象を与えてしまう可能性があるので注意しましょう。
そのため、「この人を希望したい」「どうしてもこの人が良い」などの積極性を出したい時は、「を」を使いましょう。
より丁寧な印象を与える!「から」と「より」の使い分け
次に、この2文を比べましょう。
・これから始めさせていただきます。
・これより始めさせていただきます。
どちらも文章としては成り立っていますが、「〜から」よりも「〜より」を使った方がフォーマルな形式で丁寧な印象を与えます。
ただし、カジュアルな話し方をしている時に「〜より」と使うと、少し不自然な印象を与えることもあるでしょう。
したがって、友人や近しい間柄の相手とする会話では「〜から」を使い、ビジネスシーンや、目上の方に声をかけるような時には「〜より」を使いましょう。
しっかり意志を伝える!「が」と「を」の使い分け
例えば「どれを読みたい?」と聞かれたときの答えとして、以下の2文があると仮定します。
・私は小説を読みたいです
・私は小説が読みたいです
どちらも小説を選んでいますが、「〜を」はそれほど希望も強くなく、この選択肢なら小説かな、というニュアンスです。
その一方で、「〜が」は漫画でも絵本でもなく小説のみを強く希望していることが伝わります。
また、「〜が」は
・夏が好き
・ピアノが得意だ
などの感情や、これは特にできる、といった思いを表す使い方ができます。
なので意思や願望を強く表す時は「〜が」、希望が弱ければ「〜を」使うのが適切です。
ニュアンスが変わってくる!「に」と「を」の使い分け
以下の2文を見てみましょう。
・向かいのお宅に訪問した
・向かいのお宅を訪問した
「に」は複数あるお宅の中からなんとなく行った、のニュアンスを表現します。対して「を」を使うと目的を定めた上で訪れた、という印象を与えます。
どちらを使うのが最適か、前後の文脈に合わせて使い分けましょう。
目的と移動までの流れを表す!「に」「へ」「まで」の使い分け
同じ行き先に向かう意味でも、助詞によって適した表現が違うので、それぞれ解説します。
・北海道に行く
→「北海道」という目的地、到着点を表す。
・北海道へ行く
→「北海道に向かっている」という意味のように移動する方向や着点を表す。
・北海道まで行く。
→北海道まで向かう移動までの道のりや空間の範囲を表す。
文章だけではわかりにくいかもしれませんが、北海道の方へ行く、北海道まで歩いて行く、など言葉を足すとさらに意味がはっきりするでしょう。
このため、文章で強調したい点が「目的地」なのか、「移動する方向」なのか、「移動までの道のり」なのかによって助詞を使い分けるのが良いでしょう。
主観的か客観的か、「が」と「は」の使い分け
では、以下の文章を比べましょう。
・もやしが安売りされている
・もやしは安売りされている
どちらも主語につく助詞ですが、選ぶ方によってニュアンスが変わります。
「が」を使うと主語であるもやしが強調されます。つまり、この文は並んでいる商品の中でも特にもやしに注目している状態を表します。
「は」は文章を客観的に表現する時に使います。例文の場合だと、他の商品も並列して見比べたところ「もやしは安い」という見方をしている状態です。
つまり、一つの物をみているのか他のもの比較しているのか、主観的か客観的なのかによって「が」と「は」のニュアンスが変わってきます。
「てにをは」を正しく使うためのポイント
では、ここからは「てにをは」を正しく使う技術を身に付けるためのポイントを紹介します。簡単にできることなので、ぜひ取り組んでみてください。
一度書いた文章を読み直す
一度書いた文章は、必ず読み返すようにしましょう。この時、少し時間をおいてから行うと文章を客観的に読む事ができます。
時間をおくと集中力も回復し、書き手から読み手の目線に切り替えられるので、読みにくさや強調したいポイントのずれなどに気がつくことができるでしょう。そして読み返して文章の違和感や間違いに気付いたら、訂正しましょう。
そうして自分で添削していくと、「てにをは」の正しい使い方にも慣れることができます。
人に一度文章をチェックしてもらう
自分だけでチェックすると見落としてしまう場合があるので、別の誰かにも見てもらうようにしましょう。
人に自分の文章を見てもらうと
・正しい日本語を使おうという意識が高まる
・無意識に繰り返している文章の癖に気付ける
・説明不足やわかりやすい表現を教えてもらえる
などの利点があります。
文章は読み手がいてこそ成り立つものですよね。ライティング技術のある人に見て貰えば、あなた自身の技術も間違いなく向上していきます。
本で正しい日本語に触れる
出版された本は何度も推敲されているので、基本的に正しい日本語が使われています。
おすすめは日本語に関する専門書ですが、小説やビジネス書でも大丈夫です。場面に応じた使い分け、豊富な語彙を知ることができるでしょう。
また、様々なビジネス書を読めばビジネス用語や敬語の適切な使い分けなど社会人に必須な知識も学べます。
本を読むことで普段から正しい日本語に触れることで、てにをはの正しい使い方が身に付きます。またてにをはの意味や正しい使い方をマスターすれば、誰にでも伝わるわかりやすい文章を書くことができます。
このようなてにをはなどの助詞の使い方は、一度覚えてしまえばその後も一生使える技術です。今回お伝えしたポイントを押さえて練習し、「てにをは」の正しい使い方を身につけましょう。
ライティングは特に、フィードバックを受けながら実践することで上達します。
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