医薬品などに関するライティングをするときに、ライターとして知っておくべき知識として「薬機法」が挙げられます。薬機法とは、医薬品や医療機器の製造や販売に関するルールを定めた法律です。薬機法では、広告やコンテンツの表記についても厳しく規制されています。
この記事では、薬機法(旧薬事法)が該当する商品や薬機法のルール、薬機法を踏まえたライティングのコツなどを詳しく説明します。専門知識を身につけたライターとしてステップアップしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
ライターに薬機法の知識が必要な理由
そもそも、なぜライターに薬機法の知識が必要なのでしょうか。その必要性について知っておきましょう。
違反すると罰則があるから
薬機法の知識が必要な理由の1つは薬機法に違反すると罰則があるからです。
薬機法違反となる行為には、大きく分けて「無許可営業・無登録営業」「広告規制違反」「医薬品等の取扱いに関する違反」の3つがあります。このうち特にライターが注意すべき行為は「広告規制違反」で、虚偽、誇大などの不適切な広告表現をしないようにする必要があります。
薬機法に違反した広告表現を行うと、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられる恐れがあります。
さらに、2021年に行われた薬機法の一部改正により、課徴金制度も導入されました。この課徴金制度により、薬機法に違反した表現を広告で使用していた場合、その期間中に売れた該当商品の売上のうち4.5%が違反金として徴収されることになりました。
ライターが薬機法違反をすることで、クライアント企業が金銭面での損害を被ったり、信用が失われたりするリスクがあるのです。クライアント企業だけでなく、ライターが刑事罰を受ける恐れもあります。このような厳しい罰則があるため、ライターが薬機法に準拠した表現を心がけることは重要です。
報酬アップにつながるから
もう1つの理由は、薬機法に強いライターの需要が高まっており、報酬アップにつながる可能性があるからです。
薬機法の規制は年々厳しくなっており、これに対応するため、多くの企業はコンプライアンスの一環として薬機法の遵守に力を入れています。薬機法違反による罰則を回避するためにも、薬機法を考慮したライティングができるライターが必要とされているのです。薬機法対策の知見や経験があるライターは、ほかのライターとの差別化ができ、有利な価格で案件を受注できる可能性があります。特に、薬機法管理者などの資格を持っていれば、価格交渉を有利に進めやすいでしょう。
薬機法が該当する商品は?
薬機法というと医薬品だけが当てはまるようなイメージがあるかもしれませんが、実際にはさまざまな製品が該当します。「この商品も該当するなんて知らなかった」と後から気づくことがないように、薬機法が適用される範囲について把握しておきましょう。
この段落では、医薬品以外で薬機法の規制対象となる主な商品を紹介します。
化粧品
化粧品とは、人の身体を清潔にしたり美しく見せたり、皮膚や毛髪をすこやかに保ったりするために使われる製品です。身体に塗ったり散布したりするもののうち、人体に対する作用が穏やかなものを指しています。
化粧品の例は、化粧水、乳液、美容液などのスキンケア用品や、ファンデーション、口紅などのメイクアップ用品です。このほか、歯磨き粉やシャンプー、コンディショナー、香水なども化粧品に該当します。
医薬部外品
医薬部外品とは、厚生労働大臣の承認のもとに製造・販売される商品のことです。厚生労働大臣の承認を得ている効果や効能は、広告の中で言及しても問題ありません。医薬部外品に当てはまるのは、育毛剤や染毛剤、口中清涼剤、浴用剤などです。
医薬部外品の中で、化粧水やシャンプーなど化粧品に該当するものは、「薬用化粧品」に分類されます。薬用化粧品は、「日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ」「皮膚をすこやかに保つ」など、化粧品の効果効能を記載できます。ただし、医薬部外品の効果として承認を受けているかのような誤認を与えないように注意しなければなりません。
医療機器
医療機器とは、疾病の診断や治療、もしくは予防に使用される、または身体の構造や機能に影響を及ぼす機械器具などのことです。医療機器も医薬部外品と同じように、厚生労働大臣の承認を得ている効果効能については、広告の中で言及しても問題ありません。
医療機器の具体例は、身近なところでいうとメガネやコンタクトレンズ、家庭用電動マッサージ器などです。このほか、ペースメーカーや超音波診断装置、歯科技工用用品なども医療機器に該当します。
健康食品
健康食品とは、栄養成分が補給できる、または普通の食品よりも健康に良い食品のことです。青汁やサプリメントなどが健康食品の例です。
健康食品は一般食品に分類されるため、基本的には薬機法ではなく、景品表示法と健康増進法が適用されます。ただし、効果効能などの記載に関しては薬機法が当てはまるので注意が必要です。「病気が改善される」「脂肪が燃焼される」などの効果をうたうと、薬機法上では医薬品とみなされ、薬機法違反に該当します。
ライターが知っておきたい薬機法のルール
では、薬機法ではどのような決まりがあるのかを見てみましょう。ライティングをするときには、以下のような禁止事項に注意が必要です。
効果や安全性を保証しない
薬機法では、対象となる商品の効能効果や安全性を保証することはできません。身体の変化や病気の治癒を指し示すような表現を使うと、薬機法に抵触してしまいます。
たとえば、「痩せる」「便秘に効く」「アンチエイジングができる」などと断定すると、効能効果を保証していると思われかねません。それぞれ、「ダイエットをサポートする」「朝からスッキリ」「年齢肌にうるおいを与える」などと言い換えることができます。
薬機法では、「最高級」や「最高峰」などの最大級表現も避ける必要があります。製造方法や効果効能などで、このような表現を使うことがないように注意が必要です。
また、体験談を掲載すると、効果効能や安全性を保証していると捉えられる恐れがあります。体験談を掲載するのは避け、個人の感想や口コミ程度の表現にとどめましょう。
事実を誇張しない
薬機法では、虚偽または誇大な広告は禁止されています。第六十六条に、「明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布してはならない」と明示されています。
これに基づき、成分や原材料、製造方法などに関して、事実よりもすぐれたものと思わせるような表現は避けなければなりません。
特定の商品を誹謗しない
薬機法では、特定の他社商品に関する誹謗や中傷は禁止されています。他社の商品と自社の商品を比較しながら、自社のほうがすぐれているとアピールするのもNGです。たとえば、「A社のこの商品は、製造方法が古い」「B社のこの商品よりも、自社の商品のほうが使い心地が良い」といった記載をすると薬機法に抵触してしまいます。
ただし、自社の商品同士を比較する場合は問題ありません。「自社の旧シリーズと比べて保湿力アップ」のような表現は認められています。自社の商品の比較は、自社製品のユーザーはもちろんのこと、自社製品をこれまで使用したことがない層にも同時にアピールできるため、多くの企業が取り入れています。
ライターが薬機法について勉強する方法
薬機法は複雑な法律といわれていて、しっかり勉強するにはある程度の期間が必要です。
ライターが薬機法について勉強する方法の1つは、独学です。薬機法関連の書籍やWebサイトなどを活用し、自分のペースで学べます。自分で学習するメリットは、それほど費用がかからないことです。薬機法の概要をつかみたい程度であれば、Webサイトを閲覧する程度で十分かもしれません。書籍も数千円程度で、薬機法に関して必要な情報が網羅されたものを購入できます。
より本格的に勉強したいなら、通信教育を受けるという手があります。通信教育なら、すき間時間を活用しつつ、カリキュラムに沿って体系的に学ぶことが可能です。薬機法関連の資格を取得するには、所定の通信教育を受講していることが条件になっているので、資格取得を視野に入れているライターはぜひ検討してみましょう。
薬機法を扱うセミナーに参加して学習するという方法もあります。首都圏を中心に多く開催されていますが、オンラインで全国から参加できるセミナーもあります。セミナーの対象者はさまざまですが、ライターに特化したセミナーもあるので、興味があれば探してみてください。
薬機法を踏まえたライティングのコツとは?
薬機法のルールは分かったものの、「でも、具体的にライティングではどんなことに気をつければいいんだろう」と疑問に思うかもしれません。そこで、ライターが知っておきたいライティングのコツをいくつか紹介します。
1.薬機法チェックツールを使う
1つめは、執筆した文章が薬機法に抵触していないか自動で確認できる薬機法チェックツールを利用することです。
薬機法チェックツールの中には、薬機法違反になりそうな表現を教えてくれるだけでなくリライト案を提案してくれるものもあり、とても便利です。チェックツールを使うことで、ライティング後に自分で確認する作業を省けます。機械の自動チェックに任せることで、見落としなどの人的ミスも防げます。
2.過剰な表現や断定を避ける
2つめは、過剰な表現や断定表現を避けることです。
たとえば、「しみやシワが消えた!」「これを飲むと血液がサラサラになる!」などの言い回しをすると誇大広告となり、薬機法に抵触してしまう恐れがあります。薬機法の規制対象となる商品の広告では、承認を受けていない効果・効能に関わる表現や、承認された効能を逸脱する表現は避けましょう。また、承認を要しない化粧品についても、使用してよい表現の範囲については以下で56項目に定められています。必ず確認し、逸脱した表現をしないよう注意しましょう。
また薬機法の規制対象でない雑貨(雑品)についても、商品を使用して「むくみが解消する」「ウエストが細くなる」などの効果効能を標ぼうした表現をすると、薬機法に抵触する場合がありますので注意してください。
3.最新の情報を確認する
3つめは、最新の情報を確認しながらライティングすることです。
薬機法は定期的に改正されるため、常に最新の情報を取り入れる必要があります。厚生労働省規定のガイドラインなど、信頼できる情報を定期的に確認してライティングの参考にしましょう。
まとめ
薬機法ライティングはしっかりとした知識が必要なため難易度は高いものの、その分単価や報酬アップを期待できます。薬機法に強いライターになれば、健康系や美容系のニーズが高い案件を継続して任せてもらえるかもしれません。薬機法について勉強して、ライターとしてステップアップを目指してみてはいかがでしょうか。
※4.薬機法違反に対する罰則 内の「刑事罰」を参照ください。
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